そのタイヤで梅雨を乗り切れる!?雨天は事故が激増、溝やゴムの状態を要チェック
雨の日の運転中にフッとハンドルが取られそうになり、「おっと!」と慌てて持ち直した経験がある、という方も少なくないのではないでしょうか。いつも通りに運転していたはずなのにヒヤッとした、それは「雨」が原因です。
異常気象も多いこの頃です。去年、何もなかったから、今年も安心!とは言い切れません。
雨天は事故が多いというデータやその理由、また事故を防ぐために梅雨入り前に済ませたいタイヤの安全点検について解説します。
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目次
雨の日は事故が激増!実に晴天の4倍
実際、雨の日は事故件数が晴天時の4倍になるというデータもあります。事故は天候の影響を受けるという事実を、あらためて確認してみましょう。
首都高の事故件数を見てみよう
引用:首都高速道路株式会社
上のグラフは、首都高速道路で起きた事故件数を、晴天時と雨天時とで比較したものです。
年間では、晴れた日の方が雨の日より多いですから、事故の「件数」は晴天時の方が多くなります。しかし、注目していただきたいのは「1時間当たりの事故件数」です。雨が降っている時間帯というのは年間総時間のたった6%※に過ぎないのにもかかわらず、雨の時間帯に起きた事故の数は、全体の18.4%を占めるのです。
これを1時間当たりに起きた件数に換算すると、雨天時の事故発生は晴天時の4倍にもなるということ。
「雨が降っている」というだけで、事故は起きやすいということが分かります。
特に増えるのは「施設接触事故」
雨の日に増えるのは、事故の件数だけではありません。事故の内訳も変わります。
引用:首都高速道路株式会社
上の円グラフも、首都高速道路の事故データを調査したものです。晴天時と雨天時、それぞれどんな事故が起きているかという割合を示しています。
晴天時は追突事故が最も多いのに比べて、雨天時は「施設接触事故」が追突事故を逆転しているのが分かります。
★施設接触事故とは? 道路の側壁などに接触する事故のこと |
引用:首都高速道路株式会社
先ほどと同じように、1時間当たりの事故件数に換算すると、雨天時は晴天時の12倍も施設接触事故が起きる計算になるそうです。
雨の日にいつもの感覚で運転していたら、急にハンドルが取られ、コントロールが効かなくなって側壁に衝突。そんな事故が、実際に数多く起きているということです。
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なぜ雨の日は事故が起きやすい?メカニズムを解明
雨天時に事故が起きやすいのは、タイヤが滑りやすくなることが原因です。雨の日にスリップしやすくなるメカニズムを解説します。
雨天時にタイヤが滑る原因は「ハイドロプレーニング現象」
「ハイドロプレーニング現象」というのはご存知でしょうか。自動車教習所で聞いた気もする、という方も多いかもしれませんね。
ハイドロプレーニング現象とは、ごく簡単にいうと「水のせいで車(タイヤ)が路面から浮いてしまう」現象のことです。
通常、路面の水はタイヤの溝から排水されています。排水機能のおかげでタイヤは路面をしっかりとグリップできるのですが、走行速度が上がりすぎると排水が追い付かなくなることがあります。
結果、排水しきれなかった水がタイヤと路面とのあいだに溜まり、摩擦抵抗がなくなって、車のコントロールが利かなくなってしまうというのが、ハイドロプレーニング現象の仕組みです。
ハイドロプレーニング現象は高速になるほど起きるおそれが高まるので、雨天の高速道路では特に注意が必要だといえます。
晴天時と同じ感覚で運転するのは危険!
雨天時の事故は、さまざまに揃う路面が滑りやすい条件によって引き起こされます。ハイドロプレーニング現象のほかにも、地面から浮き上がった埃や泥もスリップの原因になりますし、晴天時と同じ感覚でカーブに入ったことでタイヤが横滑りしてしまうこともあります。
雨天時は滑りやすく、事故が起きやすいことを頭に留め、晴天時と同じ感覚で運転するのはやめましょう。スピードは出し過ぎない、車間距離を広めにとるといった基本的な注意が事故を防ぎます。
梅雨入り前にタイヤ点検を
雨天時にタイヤが滑りやすくなるのは、水の膜だけが原因ではありません。タイヤの摩耗も、スリップの原因になります。
タイヤの摩耗は事故に直結する危険性あり
タイヤは頑丈に見えますが、消耗品です。走れば走っただけ擦り減り、摩耗します。摩耗したタイヤは事故に直結する危険性があるという基本を、もう一度確認しておきましょう。
摩耗したタイヤが事故につながりやすくなるのは、制動距離が延びるのが原因です。制動距離とは、ブレーキをかけ始めてから実際に車が止まるまでの距離のこと。摩耗タイヤは新品のタイヤよりも、制動距離が1.5倍になることもあるのです。「間に合うだろう」と思ってブレーキをかけたが間に合わずに衝突した、という事故が起きやすくなるということですね。
「タイヤの溝が残っていれば安心」ではない!
「タイヤの摩耗」と聞くと、タイヤの溝をイメージされる方が多いかもしれません。雨天時にタイヤと路面のあいだの水を逃がしてくれる溝は、確かに重要な存在です。減り具合が見た目にもチェックしやすいので、交換時期を見定める目安にもなってくれます。
ただし、「タイヤは溝が残っていれば大丈夫」とは言い切れません。タイヤのゴムの状態も、安全走行には非常に重要だからです。
ゴムは太陽光や風雨の影響を受け、徐々に硬くなってきます。新品のあいだは表面の凹凸も柔らかく、力強く路面をつかんでいたタイヤも、硬くなるにつれて路面との密着力・グリップ力が落ちてきます。その結果、滑りやすくなってしまうのです。
あまり走行距離が長くなければ、溝はしっかり残っているでしょう。しかしゴムが硬化していては、安全とはいえません。新品購入から3年~4年を目安に、タイヤの状態をチェックしておきましょう。
タイヤの状態チェック・交換は「梅雨入り前」が断然おすすめ
梅雨に入り雨が続くと、車を使う機会も増えるかもしれません。しかし、雨天時は晴天時より事故が起きやすいという事実があります。安全に走るためにも、梅雨入り前にタイヤの状態を確認しておくのがおすすめです。
タイヤの状態チェックの際は、溝だけではなくゴムの劣化具合も確認します。見てもなかなかわかりにくいゴムの状態は、プロにチェックしてもらうと安心ですよ。
もしタイヤを交換した方が良いということになれば、こちらも梅雨入りまでに済ませましょう。近年は急な大雨や冠水も多く、天候の予想も立てにくくなっています。今年の梅雨がどんな雨具合にあっても対応できるよう、梅雨が始まる前に「タイヤチェック&必要なら交換」が安全走行の秘訣です。
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タイヤの相談・交換は専門店であるタイヤ流通センターにお任せ!
「タイヤの溝は、どれくらい残っていれば安心して乗って良いのか」「ゴム状態は、正直触ってもよく分からない」というお困りごとを抱える車ユーザーは、非常にたくさんいらっしゃいます。確かに、タイヤの状態について詳しくなければ、点検しようにも行き詰まってしまいます。
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まとめ
「雨の日は事故が起きやすい」という事実を見てきました。雨天時はタイヤと路面のあいだに水の膜ができ、車のコントロールが利かなくなる「ハイドロプレーニング現象」が起きることで、スリップしやすくなるのが原因です。
スリップ事故を防ぐためには、スピードを出し過ぎないことや車間距離を広くとること、晴天時と同じ感覚では運転しないという基本が大切です。
またタイヤの溝やゴムの状態も、走行に影響を与えます。溝は十分残っているか、ゴムは硬化・劣化していないかなど、安心して走れるタイヤかどうかを確認しておきましょう。タイヤの状態チェックは、雨が増える梅雨入り前に終えましょう。タイヤ専門店などで、プロの目で見てもらうのがおすすめです。
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現在、一級自動車整備士(整備士歴10年)として整備工場に勤務。専門学校卒業後、輸入車ディーラーに整備士として勤務、6年間で3社を経験。その他、「国家二級ガソリン自動車整備士」「国家二級ディーゼル自動車整備士」「アーク溶接」「低圧電気取扱者」の資格を保有。