タイヤ交換時の締め付けトルクの重要性と管理方法について解説
タイヤ交換のときに最後に行うナットの締め付け。
安全に走行するためにもっとも重要な作業であり、ナットをトルクレンチでしっかりと締めます。タイヤ交換自体は簡単なので、お店に頼まずに自分でタイヤ交換をして節約を、と考える方も多いです。
ですが、締め付けトルクをしっかりと知っておかなければ大きな危険が生じてしまいます。
今回は、タイヤ交換時の締め付けトルクについて詳しく解説します。
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目次
締め付けトルクとは
締め付けトルクとは、ホイールのナットを締めるときの力のことです。
締め付けトルクの単位には「N•m(ニュートンメートル)」が使われ、「1メートルの長さのレンチの先に100グラムのウェイトを吊るした状態」のことを「1N•m」と表します。
車種やメーカーによってそれぞれ指定された適正トルクがありますが、一般的には普通車の場合は10〜12kg(約100〜120N•m)、軽自動車の場合は8~10kg(約80~100N•m)とされていることがほとんどです。
ただし車種によっては例外もあるため、念のため取扱説明書を読んだりディーラーに問い合わせてみたりすることが大切です。
締め付けトルクは他にも車両重量や日常的な走行距離、高速道路を走る頻度などでも変化しますので、自分でタイヤ交換をするときはしっかりと下調べをしてから判断しましょう。
車やホイールの指定のトルクを必要以上に超えて締め付けると、ナットやボルトに力がかかりすぎて折れてしまうことがあります。
これは命に関わる大きな事故に繋がることもあるため慎重に判断する必要があり、念のためディーラーや整備工場に問い合わせると安心です。
また、欧州車の場合は国産車よりも締め付けトルクが高めの傾向があります。
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締め付けトルクの確認方法
次は締め付けトルクの確認方法を説明します。
締め付けトルクは基本的に、それぞれの車の説明書に記載されています。
説明書がない場合は、愛車のメーカーのディーラーに直接問い合わせるとすぐに教えてもらうことができます。
また、ホイールを純正ホイールから社外ホイールに交換されている車の場合は、ホイールの締め付けトルクも確認しましょう。
ホイールの場合もホイールメーカーに問い合わせることで締め付けトルクを教えてもらうことができます。
トルクの正しい締め方
ホイールナットを締めるときは、必ず正しい締め方をしなければなりません。
間違った締め方をしてしまうと、ナットが折れたり破損したりと命に関わる重大な事故が起きてしまう原因となります。
トルクを正しく安全に締め付けるためには、道具を用意して正しい締め方を覚えておく必要があります。
トルクの管理に必要な道具
基本的には、トルクレンチと呼ばれる工具が必要です。
トルクレンチは、セットしたトルクでナットを締めることができる工具であり、必要以上に力がかかってしまわないように締めるために使います。
セットしたトルク以上の力がかからないトルクレンチを使うと、ナットやボルトへの過度な負荷を避けることができ、折れたり破損したりといった危険を未然に防ぐことができます。
自分でトルクを締め付けるときはトルクレンチを使用していれば問題ないのですが、クロスレンチ(十字レンチ)しか持っていない場合は安全のためにトルクレンチを用意しておくことをおすすめします。
トルクの締め方
ナットを締めるときは順番が大切です。
ぐるっと一周順番にナットを締めるのではなく、必ずナットを交互に締めることを心がけてください。
ナットが4本・6本の場合は対角線上のナットを交互に締めていきます。
ナットが5本の場合は「☆」を描くように互い違いに締め付けていきます。
ナットを交互に締め付けることで締め付けの偏りを防ぎ、バランス良く締め付けることができるのです。
はじめはクロスレンチや電動インパクトでナットを軽く締め、最後にトルクレンチですべてのナットを一定のトルクで締めます。
はじめから強く締めすぎてトルクレンチで締める以上の力がかかってしまっては意味がないので、はじめは必ず弱い力で締めてください。
締め付ける力加減はとても難しいので、お店でプロの整備士にアドバイスをもらったり、不安が残る場合はお店に頼むとより安全です。
タイヤホイールナットの種類
ホイールを締めるためのナットには、たくさんの種類があります。
サイズや形状、用途などに合わせて愛車に合うものを選びましょう。また、輸入車はナットではなくボルトで締めるため、国産車と基準が違います。
ディーラーに直接問い合わせると正しい情報を教えてもらうことができます。
車側のハブボルトの直径
まずは車側のハブボルトの直径に合うものでなければなりません。
これは車種やメーカーや年式で変わるものなので、車の説明書を確認するか、ディーラーに直接確認しましょう。
ハブボルトのピッチ
次はハブボルトのピッチを見てみましょう。
ピッチとはネジ山のことをいい、こちらも車の説明書またはディーラーへ直接問い合わせることで確認することができます。
ピッチが合わないと直径などのサイズが合っていてもうまくネジが回らないため、しっかりと確認する必要があります。
取付面の形状
取り付け面の形状は3種類あります。
ナットの車体側に向く方が「座面」と呼ばれ、それぞれ形が違っています。
1つ目の「テーパー座」は座面の端の先が細くなっているのが特徴で、トヨタとホンダ以外の国産車の純正ホイールのほとんどに取り付けられているナットです。
2つ目の「球面座」は座面が丸くなっているのが特徴で、ホンダの純正ホイールに取り付けられているナットです。
3つ目の「平座」は座面が平になっているのが特徴で、トヨタの純正ホイールに取り付けられているナットです。
ほとんどは愛車のメーカーで判別できるのですが、OEM車(違うメーカーの車を自社のメーカーの車としても販売している)や並行輸入車の場合はメーカーで判断できない場合もあります。
また、中古で購入した車の場合は必ずしもその車の純正ホイールが装着されているとは限らないので注意してください。
貫通ナット・袋ナット
ホイールナットの種類は先ほどの座面だけでなく、取り付けたとき外側を向く方にも2つの種類があります。
1つ目は「貫通式」と呼ばれるナットで、一般的には「貫通ナット」と呼ばれています。
貫通ナットはナットの両端に穴が空いているタイプのもので、ナットの穴が貫通しているのが特徴です。
両側が空いているためボルトが外から見えてしまいますが、ボルトの長い車でも最後までしっかり締められるという利点があります。
2つ目は「袋式」と呼ばれるナットで、一般的には「袋ナット」と呼ばれています。
袋ナットはナットの片側が閉じていてもう片側が空いているタイプのもので、穴が貫通しているのが特徴です。
こちらは外側が覆われていてボルトが外側から見えなくなるため、ナットの穴から汚れが入ったり錆びやすくなったりしにくいという利点があります。
座面とは違い、好みや用途に合わせて選ぶことができます。
材質
ホイールナットは形状だけでなく素材もさまざまで、それぞれ特徴があります。
ここでは代表的な4種類を紹介します。
1つ目は「スチールナット」で、比較的安価で丈夫という特徴があります。
純正ホイールにはじめから取り付けられているナットはスチール製のものが多く、安価であっても十分な強度があるため、定番の素材です。
デメリットとしては錆びやすいことがあげられます。
2つ目は「ジュラルミンナット」で、非常に軽く、カラーバリエーションが豊富でデザイン性が高いものもあるのが特徴です。
デメリットとしては、軽量であるが故に強度が低く、熱にも弱いです。
3つ目は「クロモリナット」で、軽量でありながら強度がとても高く熱に強いという特徴を持っています。
ですがスチールナットやジュラルミンナットよりもかなり高額です。
4つ目は「チタンナット」で、軽さと強さと錆びにくさを兼ね備えたハイスペックなナットです。
しかし、高性能であるため加工も難しく、値段は非常に高額です。
ホイールナットは車体とタイヤ・ホイールを結ぶ重要なパーツですので、余裕があればクロモリナットやチタンナットを使用することをおすすめします。
ロックナット
ロックナットとは、主に盗難防止のためのホイールナットです。
車自体が高価である場合や、高価なホイールを装着している場合に使用されることが多いです。
ロックナットは頭の部分がそれぞれ特殊な形状をしているため、専用のソケットでなければ取り外しができないこともあります。
防犯対策・盗難防止としてはとても便利で良いものですが、中には専用のソケットを失くしてしまうと大変なことになってしまうものもあります。
ソケットがないとプロがナットを外そうとしても外せないことがあるため、ロックナットを使用するときは必ず専用のソケットをきちんと管理し失くさないようにしましょう。
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規定トルクを間違うとどうなるの?
締め付けトルクには適正な数値がありますが、締めすぎていても緩みすぎていてもNGです。締め付けトルクは間違えることなくしっかりと正しい力で締めることが重要です。
締め付けが弱すぎるケース
締め付けが弱すぎる場合、しっかりと締まっていないためにタイヤがガタつき、走行中にタイヤがブレてしまいます。
車体が大きく揺れたり、ひどい場合にはホイールが外れてしまうことがあります。運転手だけでなく周囲も命の危険のある事故に巻き込みかねません。
緩みすぎないよう、トルクレンチで規定の力にセットし、締め付けを行いましょう。
締め付けが強すぎるケース
締め付けが緩すぎるのも問題ですが、強く締めすぎてもいけません。
ホイールのテーパー部分を損傷させてしまうことがあり、オーバートルクになってしまいます。
最悪の場合、ボルトが折れてしまうこともあり、走行中だと命に関わる事故を引き起こしかねません。
走行不能になってしまったり、高額な修理費用がかかってしまったりと、正しく使わなければ危険に繋がってしまうこともあります。
タイヤ交換はプロに依頼するのが安心
タイヤ交換自体は簡単に行うことができますが、締め付けトルクについてはとくに気をつけなければなりません。
タイヤ交換だけでなく、締め付けトルクについてや足回りのメンテナンスなどはプロの整備士の力を借りた方が安全性が高いです。
タイヤ交換をあまりしたことがなかったり、締め付けトルクに自信がなく不安が残ったりするときは迷わずプロの整備士がいるところに相談しましょう。
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まとめ
タイヤ交換後のホイールナットの締め付けは、緩すぎても強すぎてもNGのとても重要なものでした。
トルクレンチを正しく使い、クロスレンチしかない場合はなるべくトルクレンチを用意すると良いです。
ホイールナットも種類が豊富で、それぞれの特徴をしっかりと捉えて購入しましょう。
タイヤ交換の際は必ず正しく正確な締め付けトルクを守り、不安が残る場合は迷わずプロの整備士の力を借りましょう。
命に関わる重大な事に繋がる原因をなくし、安全に愛車に乗っていきましょう。
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現在、一級自動車整備士(整備士歴10年)として整備工場に勤務。専門学校卒業後、輸入車ディーラーに整備士として勤務、6年間で3社を経験。その他、「国家二級ガソリン自動車整備士」「国家二級ディーゼル自動車整備士」「アーク溶接」「低圧電気取扱者」の資格を保有。